精巣上体炎とは
尿道から、精巣の後ろ側にある「精巣上体」に細菌が入り込み、感染・炎症が起こる病気です。
原因としては、クラミジアや淋菌の尿道炎への感染、前立腺肥大症に伴う排尿障害および尿路感染症などが挙げられます。これにより細菌が精子の通り道を逆行して、精巣上体に到達するものと考えられています。また子どもの場合、アレルギー性紫斑病や、先天性疾患が原因になるケースも見られます。
急性精巣上体炎
精巣の腫れ、赤み、痛み、下腹部痛、発熱、倦怠感、寒気などの症状が見られます。
治療では、抗生物質の内服を行います。入院した上での点滴が必要になることもあります。
※必要な場合には、提携している病院をご紹介します。
慢性精巣上体炎
急性精巣上体炎が長引いたために起こる慢性的な炎症です。陰嚢の鈍痛、不快感などの症状が見られます。
多くの場合治療は必要なく、経過観察に留めます。
精巣上体炎の症状と種類
精巣上体炎には急性と慢性の2種類があります。急性は突然症状が起こるのを特徴としており、慢性は不快感や鈍痛が起こります。
急性精巣上体炎の症状
- 陰嚢内が腫れる、皮膚が赤くなる
- 陰嚢内が痛む
- 下腹部へ響くような痛み
全身症状として、38℃以上の高熱、悪心、全身倦怠感が起こることもあります。
慢性精巣上体炎の症状
不快感や鈍痛が主な症状で、発熱は見られません。
しこりがある・・・
精巣上体炎の症状かも
小さくコリコリとしたしこりがあり、かつ痛みがない場合は、正常な精巣上体(副睾丸)である可能性が高くなります。ただし、丸く硬い感覚がある場合は、精巣上体炎の痕跡であったり、精液瘤(精子が貯まった袋)であったりする可能性があります。
精巣上体炎の原因
小児や高齢者の場合は、腸内細菌が原因で起こっているケースが多くなります。特に小児の場合は、アデノウイルスなどのウイルスによって発症することもあります。
性活動期の男性では、性感染症が原因で発症する傾向にあります。また、前立腺肥大症や神経因性膀胱、糖尿病、低免疫状態などの疾患や、医療行為によって起こるケースもあります。
精巣上体炎の検査方法
問診・触診
陰嚢を観察し、精巣部分の腫れがないかチェックします。
触診で精巣上体の腫大や痛みを確認することで診断はつけられますが、精巣捻転症の鑑別が難しい場合は、超音波検査を通して正確な診断を行います。
尿検査
尿検査で白血球の増加を確認し、尿に濁りがないかをチェックします。
また、尿沈渣検査では1視野あたり5個以上の白血球があると、尿路感染症の可能性が疑われます。
尿の異常がなくても精巣上体炎の可能性はゼロと言えないため、尿細菌培養検査で原因菌を特定することも重要です。
尿培養検査
尿培養検査では尿中に細菌の存在を確認し、抗生剤に対する感受性をテストします。検査結果が分かるまで、数日~1週間程度かかります。
超音波検査
精巣上体の腫れがについて確認できる検査です。また、腫瘍や炎症性疾患、精索捻転症などの可能性がないかを探るために実施することもあります。
血液検査
血液検査は必須ではありませんが、高熱や陰嚢部の腫れがある場合には、炎症の程度(白血球やCRPなど)を調べ、必要に応じて抗生物質治療を行うことがあります。
性感染症検査
クラミジアや淋菌などの性感染症がないか検査します。特に、尿道炎症状(尿道から膿が出るなど)が見られる場合は性感染症の可能性も疑われます。
精巣上体炎の治療方法
主な治療法は、抗菌薬を用いた薬物療法です。
薬物治療・点滴
(抗生剤)
尿培養やPCR検査で原因菌を特定し、抗菌薬を処方します。症状が軽い場合は内服薬で治癒できますが、重症の場合は点滴が必要です。
抗菌薬の変更は検査結果によって検討され、治るまで数日~数週間かかることがあります。性感染症によるものの場合は、クラミジアや淋菌に対して有効とされる抗生物質をお出しします。
冷やす・休む
陰嚢を持ち上げたり冷やしたりすると、痛みが和らぐことがあります。
学校や仕事はできる限り休み、横になって安静に過ごすことをお勧めします。
どのくらいで治る?
治療期間は
抗菌薬などの服用を最低でも1週間以上、場合によっては2~3週間続ける必要があります。
完治すると腫れや痛みなどは消えますが、炎症が重かった場合は陰嚢内にしこりが残る可能性もあります。
精巣上体炎は女性にうつる?
クラミジアや淋菌などに感染している場合は、性行為を介して女性にも感染します。その場合、卵管閉塞を引き起こすことがあります。